日本油化工業 » お困りの方 » 発煙、煤が多い
1997年に採択された 『MARPOL 73/78附属書VI(船舶からの大気汚染防止のための規則)』 が2005年5月19日に発効し、船舶からの大気汚染物質の排出規制が全世界的に開始されました。これと前後して幾つかの国及び地域においても、船舶に対する独自の排ガス規制が検討あるいは実施されています。また、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)以外の大気汚染物質についても、粒子状物質(PM:Particulate Matter)や排煙濃度が特に注目されており、日本、欧州、米国等のいくつかの港湾地域においては、排煙の濃度規制が実施されています。
ディーゼル排気粒子は、発ガン性・変異原性を持つとされる多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon: PAH)のベンゾピレンなどを多く含んでおり、また花粉症との関連性も疑われています。
船舶の燃料である重油の主成分は炭素と水素から成る炭化水素ですが、その他にも窒素、硫黄、酸素などの化合物、金属分を含みます。
仮にエンジンに送られた燃料油が、十分な量の空気と共に未燃焼分を残すことなく全て燃焼したとすると、炭化水素は全て二酸化炭素と水になります。同時に燃料油に含まれる窒素、硫黄なども酸化されてそれぞれ燃焼生成物を生じます。また金属分は灰(金属酸化物)となって排出されます。
しかし実際には主成分である炭化水素が全て燃焼されることは少なく、未燃焼分として一酸化炭素や炭化水素ガス、未燃の揮発性あるいは可溶性の有機化合物の液体粒子(SOF)、炭化された固体粒子として排出されます。また窒素、硫黄なども気体以外の形態で排出されることも考えられます。 結局、排ガスとはそれらの混合物ですが、煙として目に見えるものは主に固体と液体(ミスト)の成分です。煙はしばしば黒煙と白煙に大別されますが、黒煙は炭化された固体粒子(dry soot)が多く含まれるもので、白煙は霧化された燃料の未燃粒子や水蒸気です。
したがって白煙や黒煙は、エンジン起動時等、まだエンジンが十分に暖まっていないがゆえの着火不良時や、負荷変動時の燃料-給気バランスが崩れた時など、燃焼状態の悪い時に発生します。
また他の原因としては、着火・燃焼性の悪い燃料油など、燃料に適さない油が多量に燃焼室に導入された場合も考えられます。
前述のように、排煙には白煙(燃料ミスト)と黒煙(固体粒子)があり、それぞれ発生原因が異なります。
白煙は、燃料の着火性を改善することで抑制できると言われています。その着火性の改善は、エンジンの側から運転条件を変更する方法と、燃料の側から燃焼特性を改善する方法の2つのアプローチが考えられます。
1:エンジンの運転条件を変更する(一例を簡単に挙げるにとどめます)
2:燃料の燃焼特性を改善する
黒煙は始動時や加速時に発生しますが、その要因は燃料油に対し十分な空気が供給されていないことにあります。燃焼室内で燃料油と空気の混合が不均一になり、部分的に空気不足になると、噴霧された燃料油は完全に燃焼せずに炭化粒子を形成し、黒煙となります。
黒煙抑制剤「エコノフリーA」
エコノフリーAは、着火性を改善し燃焼を促進することにより煤の着火温度を下げ、煤の発生を抑制します。その結果、発煙・煤の低減や燃料消費量を削減することができます。
下の図はエコノフリーAを添加したC重油の示差熱分析例です。示差熱分析では、燃料が置かれた雰囲気温度を上昇させて行き、その燃料がどの温度で着火するかを調べることができます。C重油の場合は、まず軽い成分が燃焼(輝炎燃焼)し、そのあとに残留する炭素分が燃焼(残炭燃焼)します。
この線図から、無添加時の残炭燃焼の発熱がピークとなる温度[565℃]が、エコノフリーAの添加により[515℃]に下がったことが分かります。これは残炭分が燃焼し易くなったことを意味します。
エコノフリーAは燃料重油に対し1/1000ほど添加することにより、黒煙を抑制することができます。ただし、燃料油の硫黄分が50ppm(0.005%)以下の場合は使用しないでください。黒煙でお困りの際は、是非一度お試しください。