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トラブル分析事例 燃料油 編


燃料油フィルターに捕捉されたカビ等
フィルタに捕捉されたカビ 等と繊維、藻類
現象
燃料油フィルタに繊維状の捕捉物があり、カビの疑いがありました。
分析
顕微鏡によりフィルタ捕捉物のカビの目視検査を実施しました。
結果
カビや藻類の発生が確認されました。カビには活性が認められることから、燃料油タンク底に溜まった水分中にカビが発生していると考えられます。タンク底のドレンの排出をするとともにフィルタの掃除、燃料油用の防カビ剤の使用をお勧めします。

カビスラッジ抑制剤;燃料油のカビにはカビスラッジ抑制剤の使用が有効です。カビスラッジ抑制剤は補油の直前または補油時に添加するとより効果的です。

【燃料油添加剤 - カビスラッジ抑制剤】をご覧ください。

燃料油フィルタに捕捉された高分子化合物 (1) 低密度ポリエチレン
溶剤洗浄後のフィルタ捕捉物
現象
東南アジアで補油した燃料油を使用したところ、複数の燃料油フィルタの閉塞トラブルが発生しました。
分析
捕捉物の外観を観察し、赤外分光分析(FT-IR)により成分を推定しました。
結果
捕捉物の外観は白色から薄茶色の不定形の物質でした。250℃に加熱すると茶褐色に固化しました。
赤外分光分析により、白色から薄茶色の物質は低密度ポリエチレンであることがわかりました。
燃料油フィルタに捕捉された高分子化合物(2)塩素系プラスチック類 等
フィルタに捕捉されたプラスチックペレット
現象
ヨーロッパで補油した燃料油を使用したところ、通常とは異なるペレット状の異物が燃料油フィルタに捕捉されました。
分析
捕捉物の外観を観察し赤外分光分析(FT-IR)により成分を推定しました。

赤外分光分析結果:両者は酷似しており、異物は塩素系プラスチックと考えられます

結果
溶剤洗浄後の捕捉物の外観は薄茶色から黒色で、径が数mmの球~扁球のペレット状の物質でした。加熱するとペレットによって融点が異なったため、捕捉物は成分の異なる物質の混合物と考えられました。
そのうちの1つは赤外分光分析により塩素系プラスチック類であることがわかりました。

高分子化合物による汚染;高分子化合物による燃料油の汚染はこれまでにも時々発生しており、製品管理が不充分な燃料油バージでのコンタミが原因の一つと言われています。

VLSFOのスラッジによるトラブル(1)発電機燃料ポンププランジャの固着

(VLSFO(Very Low Sulfur Fuel Oil)低硫黄重油 硫黄分0.5%m/m以下の舶用燃料油)

燃料ポンププランジャ付着物の拡大
現象
ヨーロッパで補油した燃料油を使用したところ、発電機エンジンの複数の燃料ポンプで固着トラブルが発生しました。燃料油と燃料ポンププランジャ付着物を分析しました。
分析
燃料油は性状分析と赤外分光分析(FT-IR)を実施しました。また、加熱試験によりスラッジ発生傾向を調査しました。 プランジャの固着物質に対してはFT-IR分析を実施し、燃料油スラッジと固着物質の成分比較を行いました。
燃料ポンププランジャ付着物の拡大

VLSFOのスラッジ 発電機燃料ポンププランジャの固着

赤外分光分析結果:プランジャ付着物と加熱後のスラッジはよく似ています

結果
燃料油分析の結果、植物油の混入と考えられる高濃度のカリウムが検出されました。その他にも通常燃料油には含まれない化学物質が検出されました。スラッジ発生の目安であるセジメント(TSP)は通常の範囲でした。
加熱試験の結果、このVLSFOを100℃で90時間加熱すると多量のスラッジが発生することがわかりました。 このスラッジは通常油のスラッジとは異なり、溶剤に溶けにくく、粘着性が強く、固化しやすい性質を持っていました。
FT-IR分析の結果、このスラッジとプランジャに付着した異物には類似した成分が含まれていることが判明ました。 以上からトラブルの原因はこのVLSFOの劣化により発生したスラッジが燃料ポンプ内に堆積したものと推定されました。
VLSFOのスラッジによるトラブル(2)VLSFOのスラッジの特性
現象
VLSFOを使用したところ、燃料供給ラインの汚損が発生しました。
分析
燃料油分析と加熱による変化を顕微鏡により観察しました。また、GC-MSにより成分分析を実施しました。
結果
燃料油中のセジメント量は若干多いものの燃料油規格は満足していました。GC-MS分析の結果、通常油には含まれていない化学物質が高濃度で含まれていました。この化学物質は燃料ポンプやその他の機器を損傷する可能性が高いと言われています。
燃料油の油滴を100℃で加熱すると球状から不定形のスラッジが生成しました。
スラッジの生成量は時間経過とともに増加し、油滴の周辺では大きな凝集が認められました。これらの傾向はトラブルのあった他のVLSFOと同様です。

加熱によるスラッジの経時変化 (発生量が大きく増加し、凝集しています)

VLSFOのスラッジによるトラブル(3)スラッジによる清浄機の閉塞
フィルタに捕捉されたスラッジ
現象
ヨーロッパで補油した燃料油を使用したところスラッジが多量発生し、清浄機が閉塞しました。
分析
燃料油のスラッジ量を測定し、加熱による変化を顕微鏡により観察観察しました。
また、MGOとの混合安定性試験とGC-MSによる成分分析を実施しました。
スラッジは加熱試験とGC-MSによる成分分析を実施しました。
結果
VLSFOはスラッジが0.17 %m/mでありISO 8217規格値(0.1 %m/m)を大きく超えていました。顕微鏡観察の結果、VLSFO には粘着性のある球状のスラッジが含まれており、加熱すると時間と共に増加し凝集しました。GC-MS分析の結果、通常油には含まれないフェノール類が含まれていました。
スラッジは加熱試験により、100℃付近で軟化し、冷却すると樹脂のように固まることが分かりました。
MGOとの混合安定性試験の結果、VLSFO 70%v/v:MGO 30%v/vのときにスラッジ発生率が最大(0.29 %m/m)になりました。この値はVLSFO 100%の値を大きく超えています。
VLSFOとMGO混合油のスラッジ発生率とスラッジの加熱試験(温度による変化)

スラッジの抑制について:
他油との混合に注意;スラッジが発生した場合、良質油と混合して抑制する対策が取られることがありますが、この例のように混合比によってはスラッジ発生量が大きく増加することがあるので注意が必要です。燃料油を混合する場合は事前にいくつかの混合比サンプルを作成し、スポットテストで問題がないかを確認することをお勧めします。


加熱は適切に;この種のスラッジは加熱により発生量が増加します。また、常温付近では樹脂のように固化するので発生させてしまうと処理が困難になります。従って、加熱をできるだけ避けることが大切です。清浄機の加熱温度は適正粘度が維持できる程度として、必要以上の加熱は避けたほうがいいでしょう。